第7話「任せぬ上司は、刀を抜くな 〜“全部言わねば動かぬ者”など、いらぬ〜」

天下布武のDX戦略

冒頭:任せずして、育てられると思うなかれ

――織田信長、令和の企業にて“育成計画”なる文書に目を通す。

ワシ:「ふむ、“手取り足取り、順を追って、何年かけて…”とあるな」

部下:「はい、“失敗させないこと”が育成の基本ですので」

ワシ:「…それでは、戦場で生き残れるはずがなかろうが。」

育てるとは、任せることである。
教えて、指示して、見張って……それでは猿も育たぬ。

第壱章:“マニュアル上司”の落とし穴

今の世では、「言わねば伝わらぬ」「全部説明せねば動かぬ」
――そう信じておる者が、あまりにも多い。

  • 「自分で考えるな、手順通りやれ」
  • 「責任は取らぬが、口は出す」
  • 「部下が失敗したら、育成不足と申告」

このような上司のもとでは、何年経っても“自走する者”は生まれぬ。
ましてや、非常時に動ける者など、育ちようもない

ワシは言うぞ。

「戦場では、矢が飛ぶ中で策を練るのじゃ。
書面にて育つ兵など、役立たずよ。」

第弐章:藤吉郎と、“余が何も言わなかった日”

墨俣一夜城――藤吉郎にすべてを任せたあの一件。
「砦を築け。策はない。すべて己で考えよ」
――それが余の言葉のすべてじゃ。

普通の家臣なら固まる。泣き言を申す。責任を逃れようとする。

だが、奴は笑うた。

  • 材木を上流で筏に組み、
  • 夜のうちに川を下らせ、
  • 夜明けと同時に砦を形にした。

一夜城などというが、あれは一夜で出来たわけではない。
**“誰にも口出しされぬ中で、死に物狂いで考え抜いた結果”**じゃ。

ワシは一切、指示せぬ。聞かれても、「好きにせい」と返すのみ。
それでこそ、才は鍛えられる。

第参章:育てたいなら、まず任せよ

DXとやらも、変革も、
結局は「人」が動くか否かじゃ。

  • すべて上が決め、
  • 現場に“やらされ感”だけを残し、
  • 自律なき兵を並べる。

それでは、勝てぬ。

任せよ。黙して待て。
失敗したら、責める前に、「任せ方」を省みよ。

あとがき:部下は“矢”ではない。矢を放つ者に育てよ。

使い捨ての“弾”としてではなく、
己で狙いを定め、意思を持って放てる者こそ、真の武器。

「人材育成とは、矢を削ることにあらず。
弓を手渡し、的を見せることじゃ。」

失敗する自由のない者に、成功など巡っては来ぬ。

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